窓の外から見える月は、最初に見た頃よりも随分移動しているように感じられる。

畳の上に転がった体はもう指1本動かせぬほどに気だるかった。
汗や精液やら何やらでどろどろの肌が、その臭いが不快で仕方ない。
飲みきれず口の端に残ったものや、後孔に溜まったもの。そして体に飛び散った自分のものをどうにかしたいと頭の端では思っていても、もうどうでも良くなる程に節々が辛いからだ。
かろうじて意識はあるものの、こんな状態ならば潔く気絶してしまった方が楽だと思えた。
畜生。こんな状態になるまで散々可愛がってくれやがって。
あの後一体何回やったと思ってやがる。2人分の性欲を一度にぶつけられる此方の身にもなってみろ。ちょっとは加減とかしてくれるとかは最早最初から思っていなかったけど、それでもあんまりだ。


「起きれるか?」

耳元で聞こえるのは一護の声。
顔を動かす事すら面倒で視線だけ向けると、汗で顔に張り付いた髪をかき分けるようにして覗き込まれる。

「…、無理」

文句の一つも言ってやりたかったが、散々喘がされ痛んだ喉ではこれだけで精一杯。
せめて水でも飲めれば良いのだが、散らかった部屋の中を探した所で酒の類しかないのが情けない。
一護の手を借りて起きあがった所で、どこかに出ていたらしい白哉が帰ってきた。
手には濡らした手ぬぐいと水の入った器。
其れらを受け取りようやく落ち着いたのか、深いため息を吐き出した恋次は、先ほどまで3人がいた床の惨状を見てもう一度改めて息を吐く。
今夜はもうこんなどろどろの布団でなど寝れやしないし、洗濯に出すとしてもこんなにも名残の残るシーツをどう言い訳をすれば良いのやら。

「さっきは悪かったな」

悪びれた様子も無い声で一護が言い出すものだから、何をと睨み返してみれば、目の前に改めて差し出されたのは彼からの贈り物。

「順序が逆になっちまったけど、誕生日おめでとな」

箱を開けられ現れた菓子の上には綺麗な色の蝋燭が数本、小さな炎が灯されている。
夏夜の気温のせいか、クリームは少し溶けたように崩れかけていたが、シロップ漬けのベリーがその灯りを受けて淡く輝きを帯びている。
あまり回転しない頭でぼぅっとその炎を眺めていれば、白哉からも差し出されたのは風呂敷から出された眼鏡屋の箱。

「私からもだ」

手渡された銀蜻蛉の新作が手の中で程良く重く馴染んでくる。
ああ、ようやくという安堵の気持ちと、先ほどの濃厚な時間のこれが代償かという複雑な気持ちが交錯する。
残念ながらそのケーキを食べる食欲など今の恋次には無く、顔も髪も散々な状態でそのゴーグルをかけてみる気も湧いては来ない。

だがそれでも最終的に胸の奥に広がるのものは紛れも無く感謝の気持ちである。
あれほどに疲労困憊させられたのに悪い気はしないのは、惚れた弱みであろうか。



「…、ありがとうございます」


恋次は照れくさそうに笑いながら、目の前の蝋燭の炎を吹き消した。






朝、腰痛を堪えてルキアとのデートに意気揚々と出かけた恋次は、どこで聞きつけたのか彼女の左右にしれっと付いて来たオマケ2人を見つけて路上のど真ん中で泣きそうになったとか。










おしまい。


■あとがき

兄が知ったのは、朝ルキアが恋次と遊びに行きますと報告したから。
一護が知ったのは、せっかく来たのなら帰る前に付き合えとルキアに誘われたから。

ルキアは恋次と遊びに行く約束はしたけれど、「二人きり」なんて約束してません。
せっかくなんだから皆仲良くすれば良いと思っていたら素敵(笑)
恋次は不憫なくらいが丁度良いと思います。


だらだらと長くなってしまい、お待たせして申し訳ありませんでした。
裏シチュエーションアンケート2位の「3P」という事で、初めてのシチュで色々と手探り執筆でした。いやぁ想像妄想のオンパレードですよ。3Pって難しいね!


読んでくださってありがとうございます!!
そして誕生日おめでとう恋次!!


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