窓を開けていても肌がじんわりと汗を帯びる残暑の夜。
ようやく最近は寝苦しい夜も穏やかになったものだと思っていた恋次は、現在汗だくになりながら畳の上で無駄とも言える抵抗を繰り返していた。

「オイ、暴れるなって」

足を掴もうとする一護の腹を思い切り蹴り上げ、腕を捕らえようとする白哉の手をふりほどこうと必死になって体を捩るのだが、上から後ろからと押さえつけられていては思うように動かない。
長くは続かない事など端から見ても明らかで、2対1という多勢に無勢もしかり、誰がどう見ても今の状況は恋次に分が悪かった。
だがそれでも恋次は諦めずに抵抗を続ける。例え無駄な足掻きと分かっていても、素直に今の状況を受け入れる訳にはいかなかったのだ。
明日は大事なイベントを控えているというのに、今この場で2人まとめて相手にしたならば、明日は張り切って街へ繰り出すどころか部屋からも出れはしないだろう。へたをすると一日を病人のように寝て過ごすという事にもなりかねない。そうなるとルキアを男らしくエスコートなど夢のまた夢。体調不良、ましてや腰痛で動けないなど少しもあってはならないのだ。
一人を相手にするだけでも毎回一杯一杯だというのに、それをこんな大事な日の前日に一度に相手する事など出来はしない。
例えプレゼントを貰ったからお礼に、と言っても限度があるだろう。
無理だ、嫌だ、断固拒否だ!!

「…ん…ぅん…っ…」

そう口に出して抵抗なり、暴れるなりして目一杯拒否したいのは山々なのだが、それすら出来ない今の現状に恋次は焦る。
後ろに回った白哉の胸に自分の背を預けるようにして、頭をがっちりホールドされたまま、未だに長い長い口づけを受け入れさせられていた。
もうどちらのものかも分からぬ唾液が口の端から溢れ、首を伝い鎖骨の辺りにまで流れてきているのを拭う事すらできない。
何度も角度を変え、呼吸する為に離れても直ぐに再び重ねられ逃げる舌を捕らえられる。情熱的過ぎるそれはお互いにゆっくり味わい合うというよりは、一方的にがっつかれている感が強い。
身につけている衣服も半分以上脱がされ、普段は服の下に隠されている臍やら内腿やらを一護の口や指が乱暴に這い回っている。脱げかけの布地が足や腕に絡んでますます恋次の動きを制限させた。
そうなると唯一自由のきく両手でなんとか二人を引き剥がそうと試みるのだが、髪や服を掴んで引っ張るのがせいぜいで、酸欠の為に力を込める事が出来ない体では大した抵抗はかなわない。それどころか、それすら両者の指に絡め捕られ、ついには全く動く事が出来ない八方ふさがりになってしまうのだ。

「恋次」

耳元で囁く白哉の甘い囁きがまるで愛しいと訴えるかのような響きを含んでいるのを決定打に、恋次はもう白旗を上げるしかなかった。
あぁもうこれ以上抵抗しても、此方の体力だけが削がれる一方で何の特にもなりはしない。むしろ受け入れて早く終わらせた方がてっとり早いかもしれない。
…そんな投げやりな気もしてくるのだ。

「たぃ…っ…長…」

強請るように顔を上げれば、望んでいた唇が優しく落とされる。
ちゅっと音を立てて啄み、舌先を絡め合うと首筋の産毛がぞくぞくと逆立つような感覚を覚える。
乱された髪を優しく梳く仕草に、恋次はようやくうっとりと目を細めた。そのまま頬に、首筋に、首にと舌を這わせれば体に入った無駄な力も次第に解けてゆく。
諦めて受け入れ始めた恋次に白哉は満足げな笑みを浮かべ、そして勝ったと言わんばかりに一護をチラリと横見て見下すものだから、結局は火に油を注ぐ結果になってしまうのだ。

上半身、下半身と分担し、距離も近く恋次の視線に最も入ってくるのは今は白哉だと分かってはいるものの、一護にとっては非常に気に入らない。
キスや囁きなどをする為には少し距離があるのは重々承知であるが、目の前で想い人が他の男になびく様を黙って見過ごす訳にはいかないのだ。
一護は少々乱暴な仕草で袴の帯を完全に抜き取ると、迷う事無く恋次の足の付け根に顔を埋めた。

「いっ…!!ちょ、一護っ…あっ」

あからさまな刺激に恋次は慌てて体を起こそうとするが、白哉の腕に阻まれ、それは叶わなかった。
視線だけなんとか向ければ、股の間に顔を埋める一護の鮮やかな橙色の髪だけが視界の端に写る。
下帯はまだ外されてはいない。一護はその布の上から、うっすらと頭を掲げ始めた恋次の性器にやんわりと歯を立てたのだ。
指で下帯の中で脈打つ熱の形を確かめるようになぞりながら、先端に少々強めに歯を立てる。嫌だと首を振る恋次にお構いなしに続ければ、序々に甘く喘ぎだす声音。
唾液を塗りたくりうっすらと布が透ける先端からは先走りを漏らしているのか、布越しでも少し苦みを帯びてくる。それすら揶揄してやればぴくりと強ばる体が可愛らしい。

「好きだろ?こういうの」

少しばかり顔を上げて確かめるように目を合わせれば、その刺激からか赤い瞳は涙で潤み、羞恥で頬は紅潮し今にも泣いてしまいそうだ。
更に煽るように後ろの蕾にも指を持っていくと、存在を示すようにゆっくりと撫でてやる。そして確信めいたように囁いてやるのだ。

「…ぅ…馬鹿…っ…」

慌てて顔を背けるその恥じらいが妙に初々しく一護の目に映る。普段ならば色事の経験の多さで勝つ年上の恋人にリードされる事が多い関係が今は逆転しているのだ。これが興奮しないでいられるか。
その位置からではせいぜいキスくらい。此方の方が恋次を喜ばせるには断然有利だろ?
それを誰に向かってその無言の嫌味を込めたのかなど、説明する事すら不要であろう。

眉間に皺を寄せたライバルは見て見ぬ振り。
再び口淫を再会した一護は、中で散々熱く膨れ上がった恋次自身を解放してやるべく、ようやく下帯に手をかけた。




8月30日【 1 / 2 / 3 】        
  8月31日(裏注意)【 1 / 2 / 3 / 4 】



【 戻る 】

Fペシア