机に両手をつく上半身はそのままに、後ろから袴だけ落とされた恰好を強制させられて、襦袢から覗く下帯をずらされれば、熱を持ったソコにひんやりした指が入り込む。

「い…、痛…っ!…」

ピリっとした痛みをやり過ごそうと体を捩じれば、より机に押しつけるように体重をかけられた。
そのまま耳たぶに軽く歯を立て、項の生え際の産毛をねっとりと舐め上げられる。

「あ、っ…やめッ…」

必死に視線を向けても薄く笑われる始末。
仮にもここは職場だといいうのに、半分脱げかけてる白哉の白い肩が目に入ってしまえば、思わず夜の情事の姿がフラッシュバックしてしまうのだ。
思い出せない筈なのに、痛みを訴える其処が未だ熱を持て余しているように燻りだす。

「マジ…、やべぇっ、て…隊ちょ…、ぅ」
「何がだ。こうして薬を塗ってやろうとしているだけであろう」

机の上に置かれた軟膏をすくい取り、目の前で見せつけるように掲げる白哉の指は、明るい室内でテラテラと反射して卑猥に映る。
薬品独特の匂いが鼻を掠め、背徳感と羞恥心は増すばかり。
ゆっくりと入り口に塗りこめた其れが当然のように中へと入りこむ。ぐるりと中を探る気配に負けないように、踏みしめる両足に力を入れた。
その動きはまるで前儀そのもので。気を抜けばぐにゃりと崩れてしまいそうになる。
隊長はただ薬を塗ってくれているだけだと自分に言い聞かせ、直ぐに終わってくれる事を願うのに、それはあっさりと裏切られる。

「…ン…、…ぁ…痛ッ!」

バカ野郎!何で指増やしてんだよ!
薬のおかげなのか痛みは多少和らいではいるけれど、それでも直で触られれば痛ぇのは当たり前じゃねぇか。悪化したらどうしてくれる。

ぶるぶると震える太股に、ぐいっと何か堅いものが押しつけられた。
いつの間に寛げたのか、それは紛れもなく清廉潔白と名高い上司のもので。

「や、ちょ!待っ!!」
「…恋次」
「ーー…やっ、…ァ…!!」


耳に触れるその人の吐息が酷く熱っぽいと思う余裕も無く、先端が解れたぬかるみに僅かに進入する。それに加え緩んだ下帯の前で窮屈そうにしている己の高ぶりをゆっくりと上下になぞられ、呼吸が引き攣った。

…入ってくる。
それだけは勘弁してくれと首を振りたくっても、その気になった白哉を止める術などありはしない。やがて来るだろう衝撃に備えて体をこわばらせた。
だが予想に反して、激しい圧迫感は襲って来ない。

「…っ…ぅぅ…」

先端だけがゆるゆると出入りを繰り返しながら、かろうじて巻き付いている下帯を解くように動く仕草がひどく焦れったい。何度も何度も感じる箇所スレスレを掠めては、玩ぶ様に触れられる。

「…んん、…っ」

柔らかな日差しが差し込む執務室でまるでふさわしくない行為に及ぼうとしている恋人兼上司様。
やめてくれと繰り返す口は貪られるようなキスで塞がれる。咥内を思う存分荒され唾液を絡め舌を甘噛みされる様は、紛れもなく夜な夜な繰り返している淫らな密事そのまんま。
どちらのかも分からない体液が混ざり、耳を塞ぎたくなるほどの卑猥な音が止まらない。

「や、ッ!…あ…ぅ…」

少しだけ深く進入してきたかと思えば、直ぐにギリギリまで引き抜かれ、再び綻んだ蕾を擦ってくる。
前を強く扱かれたかと思えば、高みに上る前にあっさりと離れてしまう。
まるで恋次がその先を求めるまで与えてはやらないとでも言いたげだ。

ああもう、最悪だ。
腰もアッチも痛くてたまらない筈なのに、脳から分泌される物質やら何やらが、麻薬のように思考を覆い隠してしまう。それどころか、体が勝手にその刺激を欲して手がつけられない。
窮屈な姿勢のまま荒い呼吸の狭間で舌を絡め合えば、もう理性なんか残らず吹い尽くされて、どうでもよくなっちまう。
何度も自身を擦り上げられて、理性など無いソコは早く吐き出したいと震えながら訴え続けている。

早く、はやく…。

「…ン、ァっ…」

鼻を抜ける声が甘いものに変わっている事を自覚して、自己嫌悪で死にたくなった。

もうやめてほしい。
終わらせてほしい。
それが欲しい。


「…隊長…、早…く…」

強請るように白哉へと向けられたその顔は汗で上気し、溢れそうな程涙を溜めた目じりはますます赤く、唾で濡れた唇は熱い息を吐き出しながらだらしなく開けられたまま。

「欲しいか」

何度も頷いて早くと強請った。
後は煮るなり焼くなり、後はご自由にという所。
満足したように眼孔を細めた白哉は、まさに獲物を己の爪で押さえつけた獣そのもので。骨を食いちぎられ捕食される覚悟をした恋次は、絶望と期待を綯交ぜにした心持で歯を食いしばるしかないのだ。

「…ー、っ!、アああっ、ァ…」

奥深く、傷口を広げるようにして撃ち込まれる杭が熱くてたまらない。体を裂くような痛みと、焦らされて待ちかねた感覚が合い交ぜになって背筋を掛け上がる。
ここは職場だというなけなしの理性でもって声を堪えれば、反動で涙やら唾やらが顔を伝い落ちた。

「堪えるな」

強引に顎を持ち上げられ食いしばる歯列に爪を立てられる。促されるまま口を開けば無遠慮に入り込む指が舌を捉えて呼吸が苦しい。酸素が足りない。

「ふ…あ…ァ…、はっ、ぁ…」

捕まるものの無い卓上で必死に爪を立てれば、揺さぶりに合わせてガリガリと机が削れる音が聞こえる。
体が軋むほどに腰を打ちつけられて、その衝動で両ひざが机に当たり痛みを発し、自分の体でないような錯覚に囚われた。

ちくしょう、こんな時でも手加減なんて一切無い。容赦が無い。
それなのに唇だけは妙に優しくなりやがって、と声にならない悪態をつく。
音を立て至る所に口づけられながら体重をかけ上半身を寄せられれば、背中から伝わる相手の心臓の鼓動が聞こえてくるような気がして、そんな些細な事で喜んでしまう体が情けない。
名を呼ばれれば、否がおうにも感じてしまうではないか。

「ぅ…んんっ」

背徳心が、快楽に塗りつぶされてゆく。
受け止めるだけだった体が、律動に合わせて動き出す。
その時だった。
二人きりの空間が外の世界と繋がるが如く軽いノック音が耳に入り、心臓が止まるかと思った。

「失礼します。朽木隊長はいらっしゃいませんでしょうか?」

その声はひどく緊張を含んでいる。
部下の誰かが報告に来たのだろうか、それとも、他隊から書類を持ってきた隊員だろうか。
板一枚挟んだ向こう側で、誰かが呼びかける。

「朽木隊長?いらっしゃいませんか?」

もう一度、はっきりと耳に届く声。
それを聞いて、自分達の状況を思い出しゾッと体が強張った。
顔は汗と唾にまみれ、衣服もかろうじて腕や足に引っかかっている状態では半裸と云って良い格好。
後ろには未だ上司のモノを受け入れたままで、荒い呼吸を繰り返している。

「…ッん!!…っ…」

思わず口を塞いだにも関わらず、ぐっと腰を押し付けられた衝撃でくぐもった声が漏れた。
睨み付ければ、面白げに唇の端を持ち上げる白哉の頬を一筋の汗が伝い落ちる。

「ここを何処だと思うておる」

此処は執務室で。仕事をする場所で。部下や他の連中が来たら対応しないといけない状況で。
決して上司と二人で姦淫に耽る場所では無いだろう。
それでも、その言葉だけで少しだけ心が救われるのは、結局この人に惚れきってしまっているからに他ならない。もちろん主の許可無しに入ってくる非礼な者も居る筈は無いのだが…。
再び重なってくる唇を開いて、舌を出して吸い付いた。
もう扉向こうに人の気配が消えた事すら意識の中には入っていない。
再び揺さぶられる動きに合わせて腰を動かせば、安易に上がる体温と衝動。

「…あッ…、もッ…ぅ、…ーッ…」

爪が割れるのも気にせずに、迫りくる絶頂に合わせて思い切り引っ掻いた。












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「あらまぁ、一体どうなさったんです?」


その後、完全に足腰立たなくなった俺は四番隊に担ぎ込まれた。
隊長に抱え上げられ運ばれるという情けない姿を四番隊の不特定多数の隊員に見られた上に、対応してくれたのがよりにもよって卯ノ花隊長で。

消え入りたい気持ちでベットにうつ伏せたまま、曖昧な言い訳を繰り返すしかなかった。
だってしょうがねぇじゃねぇか。

今日は、やっぱり最悪だ。





2012.10.17
2013.4.3修正




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