日記にて気まま更新。獣系注意


「そもそも、貴様は人か?それとも犬の類か?」
「っ…わん」
「……」

聞いた所でどうなるものでも無いだろうが、…この返答は馬鹿にしているのだろうか、それともただの馬鹿か。

「たいちょ?」

それは先ほど覚えた言葉だ。そうではなく人の質問に答えろ。

「わん」



「まさか貴様…他の言葉は何も言えぬのか」
「ルキア」

「他」
「たいちょ?」

「……」

どうやら言語はその2つのみ、という事か。
どういう理由か二・三度尻尾を振りつつ自信げな顔をする犬が憎らしい。


「たいちょ」

ひた、と手を付き動いたのは犬。
おずおずと這い出て縮まった距離は一歩分。
着物の下から覗く長い尻尾はだらんと垂れ下がったまま、立てていた耳も今は伏せられている。
近づく動きもぎこちなく不自然で、ゆっくりと。




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鼻をひくつかせ四つん這いで近づいて来る犬を白哉は黙って見ている。

チラチラと時折機嫌を伺うように上目遣いに視線を上げつつ、怒る事も無く動かないでいる白哉へゆっくりと近く犬。

すんすん

無遠慮に肩口へ鼻を近づけるともう一度鼻をひくひく。
間近に迫るその体はやはり白哉より大きく、背丈も幾らか長いようだ。

すんすん

ゆっくりと角度を変えて匂いらしきものを嗅いでいた犬の耳がぴこんと動き始め。それに伴い床の上をだらしなく引きずっていた尻尾も動きだす。
右に左に、次第に動きを速め繰り返す動作は明らかに相手に好意を示す為の犬の反応だ。

すんすん

突然動きだされ反応に困って傍観する事しかできなかった白哉は、その様子を黙って見ていた。
無礼に触れてくるようものなら叩いて突き放してもよかったのだが、犬は触れるか触れないかの絶妙な位置のまま、白哉の体に触れる事もなく床に尻をつきお座りの状態で尻尾を振っている。
白哉の目の前を動くのは、頭を低くして肩の間近まで顔を寄せたままの犬の頭部。
柔らかい毛に包まれた、耳。
肩を流れる紅毛と同じ色の細くふわふわな産毛の生える其れは尻尾が動くのに合わせ時折ぴく、と痙攣するように動いては止まりを繰り返していた。

至近距離から見ても、その耳は確かにこの男から生えているようで、取って付けたような模造品でもなさそうだ。


白哉は惹かれるままに手を伸ばし、其れに触れていた。







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