「隊長っ…」

未だ立ち上がりを示したままの恋次のソレを、タオルの上から強く握った。
それに驚いて、動かなくなった恋次の唇に、そっと口を押し付けた。

「…っふ…」

手入れのしていない唇は冬の冷気でかさかさと乾いていたが、それでも程よい柔らかさがあった。
ゆっくりと手を上下に動かしながら、角度を変えて啄ばむと、徐々に湿気を含んで弾力が出てくる。

何度も下唇をはむように噛んでやると、徐々に開いてきた口の中へ舌をすべり込ませる。
先ほどの時に傷付いたのだろう。その中は微かに苦い、鉄の味がした。
逃げる舌を捕らえ、絡ませると、ビクリと身体が強張る。
呼吸が詰まる。

そんな様に欲情した。

「ん…っん…ぅ」

畳の上に組み敷いて、タオルの上からその先端を指先で捏ねるように刺激してやると、堪らず嫌々と首を降るが、感じていない訳では無くて。
身体を押し退けようと、私の肩をつかんで押す仕草も力無く。
それが逆に誘っているように見える。

「隊長…っ嫌だ…」
「もう遅い」
「っア…たい、ちょ…」

あの者達をかばった時から。私を拒んだときから。
もう遅い。
嫌だと拒み続ける両手を、片手を使って頭の上でまとめて畳に強く押し付け、拘束する。

更に暴れる気ならば、鬼道も使う気でいたが、突然。散々抵抗していた恋次の体から、力が抜けた。
先ほどまでの戸惑いを含んだ強張った表情では無く、諦めたように薄笑いさえ浮かべて。
唇が微かに動いた。

「…アンタ、も?…」

耳には入ってきたのに。
私は聞くことを拒絶した。






「ぅ…っは…ァ…」

完全に抵抗しなくなった恋次を抱く事は驚くほど容易で。
腔内は直前まで別の男を咥え込んでいたおかげで柔らかく、すんなりと私の指を受け入れた。
「は…っん…」
少しずつ、恋次の息が上がり、赤い瞳が潤みだす。
挿入した指をかき混ぜると、残っていた精液と絡んで、ぐちゅりと音を発する卑猥な光景が、今まで何をされていたかを安易に想像させた。
「恋次」
「…っ……」
名を呼び触れるだけのキスをすると、うつろに泳いでいた視線がこちらへと向けられる。
上気し赤く染まった頬とは対象的に、冷たい視線。

「隊長。…いいっスよ。別に」
そんな事、しなくたって。

ぐいっと私の着物の襟を掴んで自分の方へ引き寄せると、そのまま押し付けるような接吻。
首に腕を回し、腰に内股をすり寄せる。
誘うような仕草。

…早く終わらせてくれ。
そう無言で言われた気がした。


越えてはならぬ最後の一線を越えてしまったのだ。
美しく開花する季節まで待てきれず、冬に桜を咲かせるように。
醜いエゴで、狂わせた。


「アっ…ひぁ…ぁ」

奥を突く度に、息と共に吐きだされる悲鳴のような声と、律動の度に響く水音だけが、静かな部屋に反響する。
休む暇さえ与えずに、腰を打ちつけ突き上げ続けた。


相手の弱みにつけこんで、更に非道な行いをしている。
その自覚はあったが、かといって止められる事など今更できはしない。
だからきっと今、私はひどく醜い顔をしているのだろう。
それをこれ以上恋次に見られたくなくて、強く引き寄せその顔を肩口に押し付けた。
「…っあ…たい…っ…」

恋次の立てた爪が、よりいっそう背中の皮膚に食い込む痛みも、気にならない。
流した涙の真意も、気にならない。
嗚咽まじりの泣き声も、気にならない。


最後の恋次の訴えを拒絶した時から。
ただ、欲しいー…と。







あれだけ強く抱きしめて眠ったのに。
朝、目覚めると恋次の姿は既になく。




執務中、顔を会わせても、もう近寄ってはこない。
目を会わせても、笑顔は見れない。


そこで始めて後悔するのだ。


それは狂わせた、罪。








Fin...






■あとがき


5400Hit ミツヤ様リク
「白恋で、朽木隊長が片思いで恋次に行為を強要してしまい、何故か冷静で割り切っている恋次」

えぇっと…こんな感じで良かったでしょうか(ドキドキ)
割り切ってっちゅうか…諦めてる感じになってしまいましたが。。
私の中で、片思いで強要ならハッピーエンドにはならないだろうという考えがありましたので、あえてこの結末にさせていただきました。

ちなみに、冬に桜を咲かせる方法としては、夏の時に、葉を全て取ってしまうと、秋〜冬くらいに稀に桜の花が咲くそうです。テレビでやってました。
けどコレって無理やりなので、花はすぐ枯れますよね。
ちなみに恋次が4席とかいう事を書いてますが、これは十一番隊からイキナリ六番隊副隊長になったというエピソードが出る前に作りましたので、その辺りはご愛嬌でお願いいたします。

かなり暗い内容になってしまいましたが、気に入っていただけると嬉しいです。
リク、ありがとうございました。






01 / 02 / 雪の下



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