あんまりだ。 そう恋次は熱い十息と共に漏れてしまいそうになる声を何とか飲み込みながら思った。
ぬるぬると先走りに濡れた細い指が敏感な其処を擦り上げる。その動きは酷くゆったりとしたもので、拘束された時の行為とは真逆のじれったさに、いっそ酷くしてくれた方が良かったのにという感情まで沸き上がってしまいそうになる。

「…っ…ぅ…」

視界と両腕を封じられただけで、呼吸までも制限されたような気になるのか、酷く息苦しいのは何故だろうか。
軟々としか動いてくれない白哉に焦れて、いっそ自ら動いたり求める台詞を吐いてしまいたかったが、今の状況でそれはどうかと妙に冷静な考えもあり、ただどうすればこの拘束を解いてくれるのかと考えを巡らし途方にくれるしかない。
だがいくら考えてみても白哉が怒る原因など察する事ができない。
実際に、やましい事など無い筈だ。
口では仕置きだと言いはしたが、結局、恐らくは今回こういう趣向でやりたいのだろう。この先だんだんとエスカレートしない事を恋次は心の奥で祈った。

「気を散らすとは良い度胸だな」
「ぅあっ!!」

菊門をなぞるだけだった指がいきなり奥まで遠慮なしに突き入れられ、衝撃に体が強張る。
そのまま内部を引っ掻かれる様に動かされる間にも、体を割られ片足は白哉の肩の上、高く持ち上げられる格好へと変えられて、恋次は大きく身じろいだ。
腰が僅かに浮いた事により、体の下で痺れていた両腕は幾分か楽になったものの、羞恥は高まる一方だ。
情けない己の姿と、解されて幾分緩んだ穴から発せられる湿った音に、じんわりと目尻に浮かんだ涙は、眼前の布へと全て吸い取られている。

「…俺が、何を…したっていうんすか…っ!」

本当に、あんまりだ。こんな白哉ばかりが楽しみ、自分は制限される行為など嬉しくもない。
溜まらず泣き言を言った所で返答は望めず。むしろ逆効果の様にもう1本指を潜り込まされた挙句、疎かにされていた自身を強く扱かれて、与えられる強い快楽に恋次は嫌々と首を振った。
この強い不安は何故なのだろう。視界が遮られた事で、ますます人肌恋しさが募ってゆくようだ。夜の空気に開かれ汗ばんだ肌が少し寒く、両腕が自由ならば今直にでも体を離してしまった白哉に縋りついてしまいたい。

「やめてくれよ…、っ…こんな、…俺…」

止む事の無い喘ぎの中、恋次は訴える。
触れたい。触れたくてたまらない。不本意な行為にも、ただ一方的に快楽を与えられる事にも、もう耐えられない。
大の男が寂しいと縋りつくのも情けないが、今はそんな事など考えてはいられなかった。

「…恋次」

唐突に引き抜かれた指が、肩の後ろへと回される。そのまま力強く引き起こされ、座した白哉の上へと跨るように促された。
訳も分からず不安な顔をする恋次に苦笑した白哉は、さらりと肩へ流れる緋の髪に指を絡め、もう一度名を呼ぶ。
聞き慣れた心地の良い低い声に、安堵し体が震えるのは何故なのだろう。
間を置かず喰らい付くように唇を吸われ、恋次は夢中でその舌を迎え入れた。


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「んっ…ぅ、う…」

吐息の間に舌の絡み合うくちゅりとした音と、飲み込みきれなかった声が漏れる。
跨った腰の上に膝立ちになった恋次は、首の後ろに手を回されて引き寄せられるまま、白哉に支えられ唇を合わせた。
目隠しも両手も、相変わらず開放してくれる兆しは無く無体な行為は続けられている。
両腕に引っかかった着物以外はもう裸同然の恋次に対し、白哉は未だ帯も解いていないのか、内腿の肌に触れるのは布の感触だ。
自分自身は後ろも前もどろどろの状態で、熱に疼いてたまらないというのに、下帯も着物の帯すら解かずにいられる程に白哉は冷めているのかといらぬ考えまで浮かんでくるようで、普段ならば我も忘れそうな程に酔える筈の口合わせが覚束無い。

「気を散らすなと、何度も言うておろう」

腰に添えられ、支えていた指が再び双丘の蕾へと伸ばされる。遠慮なし分け入る指の乱暴さに恋次は小さく悲鳴を上げ体を跳ねさせた反動で、思わず口を離してしまった。
崩れるように白哉の肩口へと頭を乗せるようにして縋りついたのをそのままに、更に指を増やした白哉はぐいぐいと入り口を広げるように弄り回してゆく。

「…ぁっ…ああ…っ…あ…、ぅー…」

足を震わせ、力なくしな垂れる恋次から、唇を噛むような控えめな嬌声が白哉の耳へと響いていた。
普段の彼からは全く想像もつかない程のしおらしい艶に、白哉は思わず目を細める。
恥じらう姿など体を重ねる毎に無くなってゆき、最近など記憶に無いに等しい。普段からもどちらかといえばおおっぴろげた性格である。もちろん素直に快楽に染まる姿は良いものであるが…。
こういったのも、たまには悪くないと、白哉はほくそ笑む。
その羞恥にうち震える身体が、声が、匂いが、全てがいかに自分を誘い煽り立てて止まないのだと、この男が理解するのはいつになるのだろう。
否、気づかせてなどやるものか。
このまま、何も見ずに、触れずに私だけを感じていれば良い。そう願ってしまうのは貴様のせいだ。
故に私を怒らせた罰は受けなければならぬのだ。


「ぇ…隊ちょ…や…っ!…」

指を引き抜かれたと思いきや膝の裏へと両手を回され、恋次の身体はすがり付いている頭を残したまま、座る白哉の膝の上で大股開きの格好に抱え上げられていた。
次に何が起こるのかなど想像に易く、収縮を繰り返す入り口に触れた熱い肉の感触に恋次は嫌だと声を上げる。けれども抗う術もなく、体重の重みを借りてその熱はいとも簡単に恋次の体内へと埋め込まれてゆく。

圧倒的な圧力に恋次は声も上げる事もできず、ただ息を噛んで、貫かれる異物感に耐えさせられていた。
ずぶずぶと根元まで一気に身体を落とされただけでも酷く苦しく辛いのに、一呼吸置いて慣れる間も無く上下に揺さぶられ、もう抗議の声すら上げられない。

「…ッ…アッ、…あ、ああっ…」

この細い腕の一体何処に、こんな力があるのだろうか。
力任せに繰り返される射抜に、最奥へと打たれる熱に、強い圧迫感に喉が引き攣られ恋次はどうにかなりそうだった。
このまま気まで飛んでしまうのではないかと思うほどに乱暴な行為だというのに、内部の肉を擦り上げられる度にゾクリとした快感が背筋を駆け抜けてゆく。
溜まらず嫌だの、許してくれだの、訳の分からない泣き言さえ口をついて出てゆくのにも、恥ずかしさや男としてのプライドも何も無くほとんど無意識に口に乗せた。
張り詰めた自身が痛みを発するほどに高ぶり、吐き出したいと脈打っている。自分で扱いて促す事も出来ずに放り出されたまま、時折白哉の着物に緩く擦られるその刺激さえ恋次は切なげな声を上げた。



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「ぅ…くっ…」

ふいに強い締め付けを感じ、白哉は律動を止めた。
首筋に顔を埋めている恋次の様子を伺えば、声をかみ殺しているせいか呼吸は酷く不規則で、普段は逞しいと言える体をびくびくと震わせている。
髪を掴んで強引に引き上げ体を離し下を見下ろせば、恥毛から主張しそそり立つ恋次自身からだらだらと流れ出る白濁が、白哉の着物にまで伝い落ち染みを作っているのが見て取れた。
恐らくは限界を超えて軽く達してしまったのだろう。

「恋次」

荒い吐息しか吐き出さない唇は長い間噛み締めていたのか、赤く腫れ上がり痛々しい。
ようやっと目隠しを外してやれば、その布は水分を含み幾分重く感じられた。
同じく赤く染まった瞼と目尻から、布に吸い込まれなかった雫が一つ、頬を伝って流れ落ちる。
一瞬虚ろに彷徨っていた視線が直後怒りの篭った強い眼差しに変化し、自分へと真っ直ぐに向けられるのを、白哉は黙って観ているだけだ。

「…殴り、てぇ」

切れ切れに吐き出された台詞の、何と色気の無い事よ。
それでもゾクリとした恍惚感が白哉の背を駆け上がるのは、その言葉以外の全てが、まるで自分を挑発し誘っているかのような色気を帯びていたからだ。
もしも台詞さえもう少し色のあるものであれば、それに負けた白哉は容易く腕の拘束まで解いていた事だろう。だが、そんな器用な芸当ができる副官で無い事くらい、白哉は百も承知である。

「それはそれは、では殴られぬよう用心するとしよう」

含み笑いを一つ。あっさりと軽い口調で受け流した白哉の首筋に汗が伝う。
だが恋次の腰を抱え直しその体を再び床へと寝かせ抜挿を再開させた白哉の動きは酷く乱暴で、平素の優雅な物腰など微塵も残ってはいなかった。

「あぅ…ア…ァ…っ…あ、あ…」

口を合わせ舌を絡める仕草も、力を失った恋次の肉棒を嬲る手つきも、まるで気焦っているような。
それほどに彼もまた余裕を無くす程に煽られているという事を、知らぬは本人ばかりなり。

「っ…、隊長…っ」

再び追い上げられる熱に、恋次はなす術も無く、無理やりに体を開かれる行為にただ声を上げ、白哉の熱を受け入れるしかなかった。







翌日、くっきりと恋次の腕に残った縛跡に気づく者は大勢いたが、背後に控えるお人の存在に、誰一人本人に詳細を聞ける者はおらず、空気の読めない不幸な隊員に、恋次はただ「猫に引っ掻かれたんだ」と、ありえない返答をするだけであった。


「で、結局何が気に入らなかったんスか」

時間場所を問わず、大勢の中でも二人きりの中でも、そんな質問が何度か不機嫌な副官から上がったが、それに上司が答える事は無かったという。
それでも尚も食い下がる副官が、ある時を境に一言もそれに触れなくなった事にも、誰も突っ込む事は出来はしなかった。

そんな二人の攻防を見て、色々な想像を巡らし顔を赤く染める者のいれば、青く染める者もおり、春の穏やかな陽気は、そう長くは続かない事を皆悟ったのだ。



冬の気配の無くなった春の季節は、すぐに灼熱の夏へと変化してゆくのである。







<END>




■あとがき

拍手掲載文。
怒った理由につきましては、最初に兄がちょろっと口にしておりますので、そこん所で察してあげて下さいませ。分かりにくい人ってこれだから…!(笑)
というか、最初の1p以外は全て裏って拍手としてどうよ…と思ったのですが、悪ノリした挙句マニアックなプレイですみません。

兄に「生娘」って言わせたいが為に作ったようなものです。
読んでいただいてありがとうございました!

2009/08/31


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