日記にて気まま更新。獣系注意
その日珍しく非番だった白哉は、日頃多忙過ぎ多少疲労した体を休めようと気ままな散歩に出掛け、途中何気なく買った茶菓子と茶を啜りながら、自室である隊首室の縁側でのんびりと読書でもしようと考えていた。
「……」
現在、白哉は目の前の光景を理解できずに立ち尽くしている。
隊首室の扉を開けたままの手が未だに戸に掛かり、買ったばかりの茶菓子の袋を床に落としたが、それも気にならない。
「…やぁ」
目の前、向かって中央には、何故か土下座したルキア。
左手に座っていた浮竹がいつものように笑いながら手を上げて声を掛ける。
十三番隊にいるべき来る筈の無い人間が2人も、六番隊のあろう事か隊首室に座っている。
「……」
だが、そんな事など目もくれず、白哉は右手に膝を折り座りこむ生き物に、しばらく瞬きも忘れて見入っていた。
頭をめぐる事はひとつ。
…何だ、これは。
薄汚れてはいるが長い手足に長い髪。
ぱっと見た限りは其れは自分と同じ位、もしくはそれ以上に体格のある人の形をしている。
たが明らかに違う事が2つ。
頭には髪と同じ紅毛の動物の耳。
くたびれた着物から覗く、同じ毛色の尻尾。
申し訳ない程度に時折耳と尻尾をピクリと動せては止め、また動す。
額に冷や汗を浮かべながら頭を上げないルキアの様子を伺い、白哉に視線を上げ、浮竹を見て、またルキアへ視線を向けている。
人のようで、違う生き物。
「何だ、これは」
長い沈黙の後に、やっと白哉は口を開いた。
不可解さと不機嫌を隠さない白哉の声が音の一切無い沈黙の中、低くはっきりと部屋に響く。
ビクリと肩を跳ね表情を引きつらせたのはルキアで。
その様子に今まで垂れ下がっていた生物の耳がピク、と勢い良く立ち上がった。
座っていた腰を少し上げ、畳に手を付き、目つきの悪い赤い瞳を真っ直ぐに白哉へ向ける。
…恐らくは、これが戦闘体勢。
「……」
白哉も生物も、互いに目を反らす事は無い。
見上げる先は、彼女を脅えさせている者。
見下ろす先は、変な生物。
敵意を込めた鋭い視線と白哉の視線が交差し合い、一触即発。
ますます場の空気が重くなる。
「まぁまぁ、朽木も頭を上げて。恋次君も、この人はルキアを虐めてるんじゃなくてコレが普通の状態なんだから」
「っ!!も、申し訳ありません兄様!…こら恋次!!威嚇するでない」
途端に、しゅんと…垂れる耳。
「……」
その最中、白哉の頭の中を様々な考えが駆け廻っていた。
目の前の生き物は人なのか。
あの耳と尻尾は体から生えているのか。
感情に合わせピクピクと動くあの器用なそれは、やはり動物の類か。
「……」
何故ルキアに懐いているのか。
というかルキアが土下座していたのは何の為か。
そのルキアの横で浮竹は何故笑っているのか。
そもそも何故3人はこの部屋に座っているのか。
「……帰れ」
とりあえず、関わりを持つべきではないという結論が白哉の中で成立した。
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