夜が明けるまで



三番隊の大きなの門をくぐると、恋次は真っ直ぐ三番隊の廊へと向かった。事前に連絡を入れようかとも思ったが、気にせず進むと、案の定牢部屋の一角に灯る小さな灯りが目に入る。



迷わずその灯りへと足を向けると、恋次はその中にいる人物へと声をかけた。

「よう。相変わらず陰気くせぇな」

血痕と裂かれた壁紙がそのまま壁に残っている広い牢屋の中に小さな机が一つ。
小さな灯りだけを頼りに仕事を続けていた吉良は、その不健康に拍車の掛かった顔をゆっくりと恋次へ向け、力なくも笑った。

「阿散井君はもう終わりかい?」
「おぅ、お前もそろそろ終われよ。乱菊さんから早く来いってメールが」

「うん、もう少しで終わるから」

そう、再び机の上に視線を落とし、仕事を再開した吉良を横目に、恋次はぐるりと室内眺める。



客人が座る椅子さえも無い。本当に何もない部屋だ。
床は綺麗に清掃してあるものの、壁に残るのはあの日のまま。
その中でひたすら仕事をこなす着物の裾から伸びる腕や襟に隠れる首筋が、小さな灯りに照らされ一層細く頼りないものに見える。


あれから随分時が過ぎたというのに、まだ吉良は隊首室をそのままにしていた。
隊長不在のまま今は誰が使う事も無いとはいえ、時折その中で一人物思いに耽っているのを恋次は知っている。






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