夜が明けるまで




「恋次」
「あ、はい」

差し出された空のお猪口に、食べかけの汁碗と箸を置いて恋次はお酌をする。
並々と注いだ酒は、もちろん副隊長となった恋次の地位の者でも手が出せない高級なもので、つんと香る酒の香りも濃厚。
其れをゆっくり何口かに分けて煽った白哉は、他に何をする事もなく必死に食事をしている恋次を眺めている。

ふと、手を伸ばし触れたのは恋次の頬。
急いで食べている最中に付着したのに気づかなかったのか、離れた中指の先には米粒が一粒。
そのまま口へと差し出され、恋次は子供のようだと苦笑しつつも、口を開いて舐め取った。

ふと覗く、赤い舌。


「た…っ」

舐めた指でそのまま顎を掴まれ引き寄せられた。
恋次が目を見開いた時には既に白哉の唇が恋次の其れを重なっていて。掴んだ指に強い力を込められ開いた口に流れ込んでくるのは先ほどの酒。
思いのほか辛口なその酒の刺激に一瞬眉をしかめたものの、飲ませようとする白哉の行為に従えばそれに気を良くしたのか、唇を離して再び酒を含んだ口を押し付けられる。
濃厚なのは香りだけでなく味もまた格別なのだと思うのはそれが白哉の口から与えられた酒だからこそ、こんなにも甘く体の中に溶けてゆくのだ。
喉を焼く刺激も今は心地よく、まさに媚薬。

「美味い、です」


押し倒された衝撃で食べかけの食膳の箸が畳へと散らばり汁物がお膳の上に流れたが、そんな事を気にかける暇さえなく。恋次は白哉の肩に手を回して、その体の重みと、酒を嚥下しても未だ口内を蠢く舌を受け入れた。





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