夜が明けるまで


温かい湯が張られた浴槽から天井へと上る湯気で、小さな浴室が白く霞む。



「っはー…やべぇ超生き返る」


浴槽の淵に両手をかけて、胸まで遣った恋次は大きく息を吐いた。
長時間外気にあてられ冷えた体にしみこんでゆく熱は、じんわりと全身を解してくれるようで何とも言えず心地よい。
一度肩まで浸かり、熱い湯を両手で掬って顔にかけると、もう一度大きな深呼吸。


「んで、さァ」

湯気の昇ってゆく天井を見上げ、ぼそりと呟いた。


「なんでテメェまで入ってやがる」
「…ぅ…煩ぇよ!俺だって寒ぃから帰ってきてから入るつもりで湯を張ってたんだ!文句言うな」

恋次の入っている浴槽の隣。
体を洗うためのシャワーの付いた壁沿いに座り、頭を洗っていた一護は挙動不審気味に反論した。



冷えただろうから風呂に入らないかと誘われ、それを快く受け入れはしたのだが。 何故か案内された脱衣所で一護まで一緒に服を脱ぎ、そして当然のように一緒に入っている。
あまりにナチュラルに共に服を脱ぎ始めた一護に、とりあえず体を温めるのが先だと何も反論しなかった恋次がやっと口を開いた。




「テメェは暖かい格好だったからいいじゃねぇか。つうかこんなクソ狭ぇ風呂に入ってくんな」
「狭くて悪かったな!隊にある風呂と一緒にすんじゃねぇよ………それに」


まぁ、とりあえず体は温まったからいいか。 そう再び湯にどっぷり浸かった恋次に、一護は間を置いてぼそりと呟く。





「恋次から会いに来てくれたの、すげぇ嬉しかったし」

「…ふーん…」

乱雑に洗った泡だらけの頭を湯で流しながら逆ギレぎみに叫んだと思ったら、逆に顔を赤らめ目を逸らしつつ告白まがいな台詞を吐く一護を、恋次は落ち着いた様子で眺めていた。


「若ぇのな」
「ばっ馬鹿!見んなって!」


慌てて下半身を隠すも既に遅し。
若さ故の素直さからか、僅かに主張してしまっていた一護自身に、恋次は素直な感想を漏らした。
恥ずかしさから背を向けてしまった一護を、相変わらず浴槽に浸かったままの恋次は声を出さずに肩だけ揺らして笑う。



そっと、恋次は湯から体を起こした。
床へと伸ばした両手に体重をかけ、なるべく音を立てないように、這うように。

ザバ、と波立つ音に一護が振り返った時には既に浴槽の中は人の影も無く。

「れ、ん…っ」

ちゅ、という重ねた唇の音と、シャワーの流れ続ける音だけが、やけに大きく浴室に反響した。






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