夜が明けるまで
少し前から振り出した雪がしんしんと降り注ぐ。
その量も初めの頃より多くなったようで、白く霞み視界も悪い。
自分の身につけている服は死覇装と足袋草鞋のみ。
こんな目に遭うならば羽織かマフラーか、何か防寒具を用意しておけばよかった。
「あぁ糞!寒ぃっつうの!!」
肩や頭に積もり始めた雪を掃う事も面倒で、黙々と霊圧を探りつつ大股で歩き続ける。
こんな予定ではなかったのだ。
現世に行けば一人寂しく一護が待ってて、2人で何か食いながらのんびり年越しとかいいよなーって。そうなる筈だったのに、何故今自分は寒空の中宛も無く歩かなければならねぇんだ。
勘を頼りに一護がよく通るだろう道を抜け、川辺へと足を向ける。
だが、此処にも目的の人物どころか他の人間の気配さえ無い。
もう夜も更けてきたし、この雪だ。
もう友だちの家か、自分の知らない連中の誰かの家に行ってしまったんじゃないだろうか。
歩く道の両脇や、彼方此方の家の灯りがやけに暖かく見え、…虚しいような、寂しい気持ちが一気に胸に押し寄せてくる。
まぁ…確かに一護と正式に約束なんてしてねぇし。俺が勝手に来ただけだし。
結局来てくれなんて、言われてねぇし。
…畜生。
このまま遭えないなら、もう帰ろうか。
そう思った時だった。
「何だ…恋次じゃねぇかよ…」
覚えのある声に勢い良く振り向くと、やはり覚えのあるオレンジ色の髪。
こちらは厚いジャケットに、マフラーをしっかりと巻きつけ、暖かそうな装いで。
手にはコンビニの袋。
「一…護……」
その姿を脳が認識するよりも先に、恋次は一護に向けて豪快なストレートを一発打ち込んでいた。
「”何だ”…だとぅ!?てめぇどの面下げて言いやがる!!」
「ハァ?訳分かんねぇよ何すんだイキナリ!!」
一護も何とか掌でガードしたものの、覇気迫る恋次に押され2・3歩後退ぎみ。
そんな態度にますます恋次の怒りは上昇した。
「それはコッチの台詞だもう一発ぶち込んでやる!!」
「ちょっ…タイム!待て、待てって落ち着け!」
「待てるかァ!!こんなクソ寒ぃ中歩かせやがって畜生馬鹿一護!!」
勢いにまかせ畳み掛けて叫びまくり、何発か手も出てギャーギャー路上で騒いでやったら、一護はやっとそれから何かを察したらしい。
「なら、さ」
息の切れた口からは白い霧が上がる。
「ウチ来いよ?コタツあるぜ」
「…」
「さっきコンビニで買ったラーメンとミカンも」
クソ!その緩みまくった顔がムカつく!!
そのまま掴まれた手を持ち変えられて、手ぇ繋いで家に向かった。
ますます雪が酷くなるし、外気に晒されまくりの繋いだ手が寒さで感覚無くなりそうな程冷たくなってるのも分かってたけど。
そのまま、歩いた。
クロサキ医院の裏口の扉をくぐり、階段を上って促されるまま部屋に入る。
しばらく外出していた部屋はひんやりと冷たく、冷え切った体を両手で擦っても、ぶるぶると震える体は少しも暖かくはならない。
「どうするよ?風呂なら沸いてっけど」
「おう、んじゃ借りるぜ」
こっちが脱衣所だ、そう案内する一護の後ろを、恋次は素直に付いて行った。
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