ホットチョコレート




「…あ?」
「ん。遅かったな、修兵」

仕事早めに切り上げて、ご機嫌に部屋の前までやってきた俺は、中の光景に一瞬部屋を間違えたのかと思った。

何だこりゃ。







[ホットチョコレート]









仕事終わったら部屋に来てくれって誘われた。
ちょっと照れた顔でさ。あいつが。

誘われたんだぜ?
仕事終わった後で、つったらアレだよ。
日が暮れた部屋でできる事なんて限られてるわけだし。
つまりアレだ。

…そう下心全開で、ご丁寧に風呂まで入って準備万端でいざ出陣!
意気揚揚と開けた扉の先は、そんな事できるスペースが無いくらい…埋まっていた。

「何だこりゃ」
「いや、この前現世のイベントでバレンタインってあったじゃないっすか。チョコっすよ」

いや、それは知ってる。実際、俺も部下の女子から何個か貰った。
だけど、そういう事じゃない。何個っつうか何十…いや何百か?
綺麗なリボンや紙に包まれた小さな箱が、決して広いとは言えない部屋中に積み上げられて、ここは倉庫か何かかと間違えたって不思議じゃない。

「本当は朽木隊長に渡してくれって頼まれたのと、日番谷隊長が食えねぇからやるって書き置きして勝手に押し付けられたのがほとんどなんスけど」

俺の隊長は要らないって言うし、吉良や理吉とか弓親さんにも配って大分減ったんスけど…って苦笑いしながら食ってるのはもちろんチョコ。
大の男が一人、他のヤツから押し付けられたチョコをへらへら食ってる。

すげぇ格好悪ぃ。


つうかこの甘い匂い何とかなんねぇのかよ。
これなら男臭い部屋の方がまだマシだ。


「先輩も甘いの大丈夫っすよね」
「…ぁあ?」

あー…何だよ期待させやがって。
しかもご丁寧に俺のとり分か?あの机の上の箱の山はよ。



「捨てちまえよ、そんなの。どうせ貴族様と天才児宛てのだろ」
「うー…ん、まぁ俺甘いの嫌いじゃないし。捨てるの、可哀想だし」

コイツらしいと言えばそうだけど。
それがコイツの良い所でもあるんだけど。
そういう所も俺は好きなんだけどよ。







…本気で全部食ったら腹壊す事間違いねぇな。




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「うげ、甘ぇ」
「まぁチョコっすから」


「何だよコレ、浮竹隊長へって書いてあんじゃん!手作りだぜコレ」
「あぁ、きっと日番谷隊長から回ってきたヤツっすね」


「うお凄ぇ!これ老舗甘味屋の包みじゃねぇ?すげぇ高ぇの」


成り行きで、こんな糞甘い匂いの漂うコイツの部屋で男2人でチョコ食ってる。
とりあえず俺は3個目で、もう胃の辺りがオカシイ。



つうかコイツの胃ん中も絶対オカシイ。何で平然と食ってんのよ?
流石、三食鯛焼きでも喜んで食う甘党。きっと腹の構造から違ってんだろう。






さすがに、飽きる。








「おい、口ん所」
「ん〜?」

付いてるって嘘ついて、べろりと舌で舐めた。
甘ぇ。
そのまま目ぇ見開いたまま硬直した恋次の口無理やり開かせて舌入れる。
あたり前に、中も甘ぇチョコレート味。

「ぅ…んんっ?…修へ…っ」
「口直しは必要だろ?」

「だったら茶…ぅわっ」
「要らね、こっちがいい」

押し倒した拍子にチョコが幾つかコイツの下敷きになっちまったけど、後でちゃんと食べるから勘弁な。
手近にあった食いかけの欠片を恋次の口に押し込んで、もう一回。


つうか、普通に食うよりこっちの方が断然甘ぇの。
驚いて真っ赤になってるコイツも可愛いじゃんとか考えてる俺も相当甘いのかもしれねぇけど。
お互いの熱でそれは直に溶けてどろどろになってく。


ごくりと喉を鳴らして飲みこんだ恋次が、俺の唇がチョコで汚ぇとか笑うけど、そりゃお互い様。


だから俺も笑って、また一回。
腕回されて、もう一回。


むせ返るような甘い匂いん中で、綺麗な箱に埋もれてるこの部屋で。
お互い食い合って。









体さえも溶けてどろどろになっちまえばいい。







fin...




オマケ★後日談


「恋次」
「はい、何でしょう?」


近寄る恋次くん。


「あまり近くに寄るな、甘くてかなわぬ」
「へ?…あ、待って下さい」


逃げる白哉さん。


「だから寄るなと言っている。…散れ、せ」
「!!!…隊長ぉ〜…っ」




部屋のチョコが無くなるまで、恋次くんは白哉さんの周り半径20m以内に入れてもらえませんでしたとさ。




END★











【あとがき】

8200Koala様
甘々修恋小説。兄様友情出演です。

すっ、すみません本当に遅くなってしまって申し訳なさ全開です(土下座)
裏もOKとおっしゃってくださったのですが、このノリで行くと食べ物プレイに走りそうなので、それは人様に贈呈すんのにどうよ…と良心が訴えるのでちゅーまでで止めておきます(汗)

私の中の修恋は、わりと先輩後輩の友情関係がそのまま恋人関係になった感じのイメージなので、修兵は恋次にひたすら甘い人で、割りとロマンチストなヘタレだと良い(いや、アンタの趣味書いてどうするよ!)



気に入って下さる事を願って捧げます!
ありがとうございました。。




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