最初が肝心(正月企画)



風をきって歩く寒さで縮こまる肌。
両手に息を吹きかけると目の前がふわりと白く曇る、そんな夜。
屋根に残ってる溶けかけの雪が夜目に慣れてきたせいかやけに明るくて、辺りは大通りを外れて、人の気配さえ無いんじゃないかってくらい静寂しきってる。

腕の中にはさっき通りで買った好物の鯛焼き。紙袋から出来立てらしい香ばしい香りと熱が伝わってくるのが食欲をそそるけど、まだ食べない。
冷めて美味さが半減するといけないから、さっきよりも小走りで。

わりと、足取りは軽い。


先が見えないんじゃないかってくらいだだっ広い塀をぐるっと回って入り口へ。
これまた馬鹿みてぇにデカい門を叩く。


「これはこれは、阿散井様。お待ちしておりました」
「ども、…お邪魔します」

腰の曲がったじいやさんに案内された先はアンタの部屋。


日付は12月31日
23時を、少し回った頃。




[最初が肝心]








「…朽木隊長。阿散井です」
「入れ」

その声に幾らか増す緊張、同等の期待、僅かな安堵。


理由は無いけど、何故だか大きな音を立てちゃいけない気がしてできるだけ静かに扉を開ける。そこは抜群に景観の良い庭に面した広い部屋。

それに負けじ劣らず絵になるようなアンタの姿。



ますます高まる緊張感。



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無言で差し出された座布団に腰を下ろすと、朽木隊長は読んでいた本を閉じて俺の方に向き直る。
相変わらず正座した姿も綺麗なんだなとか思うから、俺も自分の部屋のように寛ぐわけにもいかなくて。視線の高さは一緒なのに、なかなかそれを合わせられない。

なんか、茶道とか何かのお作法受けてるみてぇ。


「…よかったんすか?せっかくの新年に」
「不服か」

「いえ」

そういう問題じゃなくて。
俺が言いたいのはせっかくの新年なのに、貴族である朽木家の屋敷に俺みたいな部外者がいていいのかって事。

まぁ、当主のアンタが呼んだんだから、別にいいんだろうけど。



仕事納めの最後の最後に、ふいに予定聞かれて。
俺は毎年のように檜佐木先輩や吉良達と大騒ぎして年越しますって言ったら誘われた。

たった一言、来いって。
そのお陰で、寒くて凍えそうな夜道を歩いて図々しく来ちまったのは、阿呆みてぇに浮かれた俺。

否、確かに門の前に来るまでは浮かれまくってたんだけどな…。

じいやさんに案内されて。
めちゃくちゃ綺麗な屋敷歩いて。
アンタの部屋の前に立って声かけて。
今、向かい合わせて。


何っつうか…。
すげぇ緊張しまくってる。
とりわけこの屋敷の堅っ苦しいつうか、豪勢っつうか、そんな空気が…苦手。



「えと…ルキアは?」
「あれは黒崎の家に呼ばれて此処にはおらぬ」
「そ…っすか…」

いやルキアに会いたかったわけじゃねぇんだけど。

会話が止まっちまう。



隊長は自分から話す人でもねぇし、騒がしいのは好きじゃねぇともわかってるけどよ。

俺の間が持たないんだ。



どうしよう。
何話そう。

えーと…。

新年始まってからする仕事の話とか?
虚の最近の動きとか?

駄目だ、これじゃ仕事中と変わらない。


最近見つけた甘味屋の餡蜜がめちゃくちゃ美味かったとか?
持ってきた鯛焼きの店はなかなかイケる味でお勧め…。

否、そもそも隊長は甘いモンは食べない。





隊長は俺を見てるだけだし。
やべぇ、何か話さねぇとマズいか?



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「恋次」
「はっ…はい!」

「…何を百面相している。寒いのか?」
「いえ、そうじゃなくっ…て」

ふいに伸ばされた手が頬に触れる。
暖かい指の感触が、冷え切った体にじんわりと染みて。
そのまま縮まる距離。

唇も、あったけぇんだな…って思う。


「隊長……寒いっす」
「そうか」

その熱が名残惜しくて、嘘をつく。
きっとこの人はそんな事全部お見通しなんだろうけど。だから何も言わずにもう一度交わす接吻。
触れるだけのキスが焦れったくて指も絡めて、口を開いて噛みつくように求めたら、目を細められて、それが笑われた事だと分かった。

「…っ…は…」
「まだ冷えるか」

「…はい」



あ、また笑われた。


するりと着物の合わせから指が差し込まれ、胸の突起を捕らえられる。
ぶるりと体が震えたのは勿論寒いんじゃなくて。
髪紐を解かれてゆったりと長い指がそれを梳く。首筋に彫った刺青をなぞるように舌がつたって呼吸が詰まる。
肩を押されて畳の上に横になると体の上にアンタの重みが心地よく乗り掛かる。


「…恋次」

名を呼ばれて、上昇する体温。

気まずい空気とか、何話せばいいかとか、そんな事で悩んでるなんてきっとこの人にとっては取るに足らないどうでもいいことなんだろう。



俺だけ脱がされるの何か嫌だから、手探りで隊長の着物の帯を外そうと腕を伸ばす。
既に立ち上がりつつある隊長のそれが布ごしに触れて、自分と同じなんだって解って…妙に恥ずかしくて。

嬉しくて。

腕を回してぎゅって抱きついた。







「…っ…ぁ…」

中を解す指がぐるりと円を書くように大きく動き、その度に前立腺を刺激する。
焦らすようにポイントを外されたかと思うと今度は念入りに攻め立てられて、2本、3本と指は増やされて、完全に立ち上がった俺自身を隊長の残った片方の手と舌が追い上げる。


「う…ぅあ…隊ちょ…っも…っ」


情けねぇけど、こんなあからさまな刺激に長くなんて到底耐えられそうも無い。

もう出るって、…そう体に力を入れた瞬間、自身を擦っていた指でそのまま根元をせき止められた。

「まだだ」
「ぃ…た…痛……っぇ」

強く駆け抜ける激痛さえも体は快楽を見いだし、握り込まれて行き場を失っても尚萎える事なく先端からダラダラと先走りが漏れる。
中を弄る指の刺激に耐えられず跳ねる動きに合わせて隊長の腹に擦れる度、糸を引く卑猥な音が耳の奥へ響いた。

「や…っ…ぁあ…」

根元の手だけはそのままに、探っていた指を抜かれてあてがわれるアンタの熱。
出口を与えられないまま押し込まれ走り抜ける快楽に、たまらない羞恥に、気が狂いそうになる。


「…っ―アあ!…あっぅ…は…っ」
「っ…きついな」


当たり前だろ!
だが口をついて出てくるのは言葉にもならない声と、過呼吸みてぇな息だけ。
その間にもガクガクと揺さぶられて我慢は直ぐに限界を越えて。視界が涙で白く濁る。
開きっぱなしの口からはだらだらと唾液が流れて畳に落ちて、汚いとかそんな事気にする余裕も無い。


「あ…アっ…ん…ィっ…うあ…っ」
「恋次…」

そっと、唇を咬むようなキスをしてきた隊長の首にしがみつく。
止めてくれとも、無理だとも云えなくて…半ば泣きそうな声で必死に首を振って訴えると、何度か突いた後にやっと解放される戒め。
直後、吐き出る白濁。



一度じゃ出きらなくて、何度もイッたんじゃねぇかってくらい自分の腹にぶちまけた。


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「…んっ…ん…」

相変わらずアンタは無茶苦茶だ。
そんな文句やイヤミも言えないまま唇を塞がれて、再開された律動に再び頭を持ち上げ始める俺自身。
なんかもう、どうでもよくなってきた。


「ふっ…あ…ぁっ…た…ぃっ」

腰を打ちつけられる圧迫感で、胃や肺ん中から声が出てるみてぇ。
触れてる肌が、繋いだ手が、ソコが。
どうしょうもないくらい熱くて、霧のかかった思考でぼんやりと隊長を見上げる



ふと、どこかから新年を告げる寺の鐘が窓の外、真っ暗な空に木霊した。

あぁ、今まさに今年最後の瞬間、今年最初の瞬間なんだ。
せっかくこの瞬間に一緒にいるのに、畏まって新年の挨拶とか言う余裕は俺もこの人も無いみてぇだけど。







「今年こそはアンタに勝ちます。朽木隊長」

今年の抱負も去年と同じ。
今年こそはアンタを越えてやる。


そう、かすれた声で宣言すると、呆れたように目だけで笑われて「そうか」って一言。
相変わらずのアンタの反応にちょっとムカついた。



いいじゃねぇか、やっぱ年の始めの抱負はデカくなくっちゃ。





A HAPPY NEW YEAR!!












【あとがき】

あぁ…今年最初のがこんなのでごめんなさい(土下座)
ヤッただけっつう中身の無い文ですが、テーマ、ヒメハジメ…こんな感じでどうでしょうか?(ドキドキ)


それでは今年も宜しくお願いいたします。
読んでいただきありがとうございました!
皆様よいお年を(*^ー^)ノ



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