青白い静寂
静と動のように対極する我らが同じ空間に存在する事はひどく滑稽な事で。
そして心地良くもある。
まだ朝とも呼べない頃、ふいに目が覚めた。
障子から差し込む光もまだぼんやりと青白く、こんな時間帯に活動している隊員も少ないせいか、昼間の賑やかな様子とは反対に静寂で澄み切っている。
「あんたはいつも勝手だ」
昨日の晩、そんな事を言われたような気がして…ふっと、自分の横に眠る彼に目をやった。
すぐ隣の人間が起きあがっているのに、気配や霊圧の変化に気づく事も無く熟睡したままだ。寝付く前と大して変わっていない自分と比べてどうだろう。
2人で眠るには広いとはいえない布団から派手にはみ出した手足。
何度も寝返りをうった為に乱れまくった長い髪。
帯のおかげで全開ではないものの、脱げかけの着物。
はだけた胸元から見え隠れする黒く特徴的な刺青。
それに映える自分が残した赤い性痕。
乱して流れた深紅の髪。
せっかく着せてやったというのにだらしないものだ…
「…恋次。」
返事はない。
「明日は副隊長の連中と任務で朝から出るんです。だから…すんません」
昨晩は珍しく抵抗を見せたから。
そして久々に会える旧友との再会を想い、楽しげに頬を緩めたから。
拒む事など許されはしないのに。
私の前で違う者を想い、笑うなどあってはならないのに。
躾るように、教え込むように、何度も時間をかけて躰を繋げた。だから、情事が終わった後、衣服も整えずに気絶しするように眠ってしまったのには困った。
半ば強要し、体を重ねさせている事は自覚している。
決して恋人のように抱き合って眠るような甘い関係ではないと考えているし、私はだらしない姿で眠るような育ち方はしていない。
死んだように深く眠る彼に、少しだけ湧いた罪悪感で着せてやったのに。
きっとお前は、目覚めればそんな些細な事など気にも止めずに昨晩の不平不満を喉の奥で堪えながら、軋む体で急ぎ自室へと帰って行くのだろう。
あと数刻後には夜が明け、隊員達の賑やかな鍛錬の声が、離れたこの部屋にも微かに響いてくる時間になる。
任務に遅刻するなどという六番隊の格を下げる事はあってはならないから、それまでには起こしてやろう。
だが忘れるな。
私が常に証を残す意味を。
自分の立場を。所有者を。
だからもう少しだけ、この静寂を楽しんでおこう。
Fin...
【後書き】
自分勝手すぎます隊長…。
というか恋次は結局最後まで起きませんでしたね。
隊長はへそ曲がりなので、恋次が気づかない所で優しい顔をして見守っていたりしてたらたまらないな!と思います。
読んで下さってありがとうございました。
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