- ただ、偶然かもしれなかったあの瞬間 -
[微妙な19のお題一覧]
「…卍解」
そう一言、言葉を紡ぎ、私は前を見る。
前方に捉えた彼の者を見る。
指から離れ、ゆっくりと、音もなく波紋を刻んで地面へ吸い込まれる刀。
直後、静かに浮かび上がる刃を後方に感じ、最後の言葉を紡ぐ。
光を受けて、美しく散りゆくその様を。
衣服を切り刻み、皮膚を裂き、役目を果たさなくなった髪紐から舞い上がる、紅の髪を。
吹き出る血潮を。
声を上げる事さえ出来ず、崩れ落ちるその様を。
目に焼き付ける。
巨大なお前の卍解も、後方に聳える塔の原型さえも、残さない。
残しはしない。
お前の血に染まった花弁の鮮やかな紅を、脳裏に焼き付ける。
お前が進もうとしている道が、視線の先が、望む未来が違うのならば。
せめて、お前の目に最後に映るのは、私でありたい。
只の偶然なのか、私の甘さ故なのか…立ち上がれたお前に、向かって来る瀕死の体に、とどめを刺す事をしなかったのは私の只の気まぐれなのか、失う事を望まないでいる醜い執着心だったのか。
強い眼差しで刃を向けるお前の最後の牙が届く事を止めなかったのは只の喫驚からか、強固たる意志に対するささやかな敬意からか。
全てが静寂に戻った空間で、目を閉じる。
鮮やかな紅を。
その最後を
…焼き付ける。
Fin...
5500HITゆな様リク。
「兄様サイドにてお題01」
この場面にしようと思って考えて、黒い感じを出そうとしたのですが、…ん〜?
すみませんこんな感じになりました(汗)
く、黒い兄様はまた今度という事でっ(オイ)
リク、ありがとうございました!
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