- サイゴ - [妄想人に捧ぐ48のエ口御題]
「…っ…」
ズキリと、肩が疼く。
やっと塞がったばかりの、一護に負わされた傷だ。
力を抜こうと意識しても、それは阻まれて出来ず、体が動く度に走る痛みを紛らわそうと、震える喉から大きく息を吐いた。
射すような霊圧と、俺を組敷き見下ろす冷たい視線が不快で、噛締めた奥歯がギリっと鳴った。
「声を殺すな」
「…イっ…ぅ…」
見張りの隊員はアンタの霊圧に耐えきれず、とっくに逃げ出した後で、冷たい部屋に質素な寝台が軋む嫌な金属音と、荒い自分の息づかいだけが反響している。
声なんか我慢しなくたって誰も聞いちゃいない。
そんな事とっくに知ってるさ。
意識が覚醒した頃を見計らって、あの人はやってきた。
もちろん見舞いなんてモノじゃないのは始めから分かっていて。
起き上がる体力さえも無いと知ってるくせに、それでもあの人は俺を抱いた。
途中、何度痛みで気を失ったか知らない。
「まだ痛むか」
「…アンタのせい…だろ」
それでも定期的に治療にやってくる医療班のお陰で、ようやく起き上がれるほどに回復できたと思ったら、今度は先ほどまで寝かされていた硬い寝台に膝を付いて辛い体位を強いられ、受け入れさせられてる。
「…っ…」
「誰が休んで良いと言った」
「…っす…ませっ…いッ…」
意識が遠のく度、解かれた髪を掴み上げられ壁に押し付けられる。
強制的に引き戻される現実。
「ひっ…アァ、ん…ぅ」
どう動けばこの人が満足するのか覚えさせられた躰は意思とは無関係に、熱を追いかけ動き出す。
そう躾られ、飼われる事に慣れてしまった自分。
「く…隊長、ア…」
名を呼べば優しく撫でてくる指、視線を合わせれば重ねられる唇。
乱暴に動く律動とは別物の優しい愛撫に、傷の痛みなんか忘れて溺れれば直後、酷く突き上げられる。
「ん…は…アァ…ぅ…」
どうやらこの人は、この傷がえらくお気に召さないらしい。
アンタじゃない…旅禍に付けられた深い傷痕。
わざと爪を立てるから、せっかく塞がったはずの傷口から新しい鮮血が包帯にじわりと広がってゆく。
広がる鉄錆の匂いと、精液の匂い。
薄暗い檻の中で、繰り返される泥沼のような快楽。
「っぁ…も…隊長…ゃ…」
「…まだだ」
何度俺を抱こうと、アンタはきっと満足しないんだろう。
どんなに蹂躙されようとも。
もう俺は、決意してしまったのだから。
飼われる事を辞めてしまったのだから。
こうやって触れられるのも後少し。
もう少し経てば走れるほどに回復する。
そうしたら…。
ルキアを、助けに行きます。
「…たぃ…ちょう…」
心は既に此処には無いのに、体は名残惜しいとすがりつく。
浅ましいと分かっていても、何度も名を呼んで腕を伸ばす。
アンタに触れられるのは、きっとこれで…。
サイゴ
fin
…乙女過ぎて何かもぅ…。
(06.02.18)
【 戻る 】