1代目 拍手


縁側へ続く扉に背を預けて小さなため息を吐く。

すげぇ良い天気。
澄んだ空。
爽やかな風。
暖かい日差し。

しかも非番。

そんな最高に素晴らしい日で、最高の天気なのに。


「……」

俺は今、隊首室で一人、戻らない隊長を待ちぼうけ。

一体どこまで行ったんだ、あの人は。

あぁ…、街に出てぇ。
それか理吉をからかいに行くとか、サボってる筈の一角ん所に行って手合わせしてもらうとか。

…何でもいいから動きたい。


そんな誘惑を我慢してまで俺が此処で待ってるのは隊長が昨日言った、たった一言だけが理由で。
それでも普段口数が極端に少ない事に比例して感情の変化が乏しいあの人が言った一言は俺にとっては絶大な事で。


「一緒に過ごしたいんじゃねぇのかよ…」

湧いてくるのは怒りから来る苛立ちよりも、落胆から来る不安の方が若干多くて。
愚痴るだけ愚痴ると縁側にゴロリと横になる。
日光を吸収して、板はほんのりと熱を持っていて。直接紫外線やら何やらが顔に降り注ぐ眩しさに瞼を閉じると、板だけじゃなく自分の服も温まってくるのが分かる。


……。
やべぇ…寝たい…。


すげぇ良い天気。
澄んだ空。
爽やかな風。
暖かい日差し。


薄れゆく意識の中で、あの人の香と、在るはずの無い鯛焼きの香りがしたような…気がした。





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